スティーヴン・ユァン
スティーヴン・ユァンはソウル生まれ、米ミシガン州育ちの韓国系アメリカ人俳優。シカゴの即興劇団を経て『ウォーキング・デッド』のグレン役で知られ、『ミナリ』でアジア系アメリカ人初のアカデミー賞主演男優賞候補となった。『BEEF/ビーフ』ではゴールデングローブ賞とエミー賞を受賞している。[4][12][16]
更新 2026-10-08/出典確認 2026-10-08
生い立ちとデビューまで
デトロイト郊外の移民家庭
スティーヴン・ユァンはソウルで生まれ、4〜5歳のころ家族とともに北米へ渡った。育ったのはミシガン州デトロイト郊外のトロイで、両親はデトロイト市内で美容用品店を営み、本人も店をたびたび手伝った。治安の悪い地域にある店で、父親が強盗に銃を突きつけられたこともあったと後に語っている。2001年にトロイ高校を卒業してカラマズー大学に進み、心理学を専攻して神経科学も重点的に学んだ。両親は息子が医師になることを望んでおり、本人も医学部進学を前提とした課程を歩んでいた。指導教員だった心理学の教授は、彼を学ぶ意欲が強く、年を追うごとに飛躍的に成長する学生だったと振り返り、同じ移民家庭の出身として音楽の話でよく打ち解けたと語っている。[4][5]
即興劇との出会いとシカゴ
演技との出会いは大学1年のときである。寮の向かいの部屋の学生に誘われ、その兄ジョーダン・クレッパーが中心メンバーだった学内の即興劇チームの舞台を観て強い衝撃を受けた。最初のオーディションには落ちたが、初めて演技の授業を受けて翌年に再挑戦し、チーム入りを果たした。初舞台を観た母親に率直に「あまり良くなかった」と言われたことが、本気で上達を目指すきっかけになったという。卒業後はクレッパーを追ってシカゴへ移り、即興劇団セカンド・シティで約4年間腕を磨いてツアーカンパニーの一員となったほか、アジア系アメリカ人によるスケッチ・コメディ集団ステア・フライデー・ナイトにも参加した。反対していた両親も2年間の挑戦を認め、ロサンゼルス行きを勧めたのも両親だったといい、2009年に西海岸へ拠点を移した。[4][6]
活動の歩み
『ウォーキング・デッド』のグレン
ロサンゼルスでは、まずCM3本の仕事を一度に得て生活をつなぎ、落選したパイロット版のキャスティング・ディレクターの計らいで『ビッグバン★セオリー』に端役で出演した。続いてAMCのドラマ『ウォーキング・デッド』のオーディションを2度受け、フランク・ダラボンから直接役を打診された。移住から約半年での抜擢である。演じたグレン・リーは、ピザの配達をしながら漫然と暮らしていた青年が、ゾンビがあふれる世界で大人へと成長していく役で、ファンに愛される人気キャラクターとなった。グレンは2016年のシーズン7初回で、悪役ニーガンの手にかかって命を落とす。原作コミックでも描かれた象徴的な死であり、ユァンはその死を他の誰にも譲りたくなかったと語っている。[4][6][7]
ポン・ジュノとイ・チャンドン
グレン役の後は、韓国の映画作家との仕事で新たな評価を得た。ポン・ジュノ監督のNetflix映画『オクジャ/okja』(2017年)では、英語を話す動物保護活動家たちと韓国語しか話さない少女の間に立つ通訳役を演じた。ポン監督はJTBCのトーク番組に電話で出演した際、彼を韓国名のヨン・サンヨプで呼び、優れた俳優であることに加え、韓国語と英語の両方ができることも起用の理由だったと語っている。同作の宣伝中に一緒に仕事をしたい監督を問われてイ・チャンドンの名を挙げたことが本人に伝わり、イ監督はポン監督を通じて連絡を取った。こうして出演した『バーニング 劇場版』(2018年)で謎めいた富裕な青年ベンを演じ、同作はカンヌ国際映画祭で英業界誌スクリーンの批評家採点史上最高の評価を受けた。[8][9][2]
『ミナリ』でアカデミー賞候補
リー・アイザック・チョン監督の『ミナリ』では、韓国から米国へ渡り、さらにカリフォルニアを離れて自分の農地を求める移民の父ジェイコブを演じた。ユァンは、どの人物も役割や典型に押し込められずに描かれた脚本の誠実さを出発点にしたと語り、アジア系の俳優には良い役が少ないなかで自ら新しい道を切り開くことを、ジェイコブの生き方に重ね合わせたと明かしている。チョン監督も、両親の世代をただ称えるのではなく、一人ひとりの選択の背後にある人間らしさを描こうとしたと説明している。この演技で彼はアジア系アメリカ人として初めてアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、共演のユン・ヨジョンも韓国人として初めて演技部門の候補に名を連ねた。[11][12]
『BEEF』での受賞と最新作
韓国系の作家・監督イ・ソンジンが手がけ、韓国系の俳優とスタッフが多数参加したNetflixの10話構成のドラマ『BEEF/ビーフ』では、主人公ダニー・チョーを演じた。同作は配信後5週連続でNetflixの視聴時間トップ10に入り、ユァンは第81回ゴールデングローブ賞のテレビ部門で韓国系俳優として初めて主演男優賞を受賞、第75回エミー賞でもリミテッドシリーズ・映画部門の主演男優賞に輝いた。その後も『NOPE/ノープ』『ミッキー17』、Netflix映画『The Rip』などに出演し、アマゾンのアニメシリーズ『インビンシブル』では主人公の声を担当している。2026年には、自身の製作会社セラドン・ピクチャーズを通じて製作総指揮も務めるNetflixの超常ドラマ『Pagans』の主演に決まった。[13][14][16]
エピソード
デニーズで祝った「失敗」
『ウォーキング・デッド』に決まる直前、手応えのあったパイロット版のオーディションの後、ユァンは自分へのご褒美としてデニーズで朝食をとって祝ったが、直後にマネージャーから不合格を告げられ、チャンスを逃した、もう無理かもしれないと落ち込んだという。そのすぐ後に受けたのが『ウォーキング・デッド』で、ダラボンに「この役をやりたいか」と聞かれた瞬間は気を失いそうになったと冗談めかして振り返っている。デトロイトの店では、万引きを止めた父親が相手ともみ合いになり、売り物の傘を手に互いに「フェンシング」を繰り広げたこともあったと、少年時代の体験を笑い話として明かしている。[4]
1年間守ったグレンの秘密
グレンの退場は、シーズン6の初めにショーランナーのスコット・ギンプルから告げられていた。気持ちの上では一つの章を終えたと区切りをつけたのに、さらに丸1年その秘密を抱え続けるのはかなりつらかったと明かしている。最期の台詞「マギー、必ず見つける」については、頭を殴られて混乱し、言葉を探してもがく瞬間に、できる限り誠実に演じようとしたと説明した。何より難しかったのはキャストやスタッフとの別れで、濃密な時間をともにしたアトランタの仲間との絆は、職場を離れても続いていくと語っている。[7]
ベンを演じた日々
ユァンは『オクジャ/okja』を二つの文化の間で生きる自分自身を映したような経験、『バーニング 劇場版』を自らのルーツを深く探る経験だったと語っている。ベン役では、韓国人を演じることで「ハイフンでつながれた」アイデンティティを説明する必要がなく、ただ役として存在できたことに真正さを感じたという。一方、虚無を抱えた人物の視点で過ごした4〜5か月の撮影期間は、妻にとってあまり楽な時期ではなかったと笑う。ベンの韓国語は口語的でなく正確すぎる話し方にし、イ・チャンドン監督とは彼自身に備わる西洋的な部分をあえて消さないよう話し合った。英語リメイクの可能性を問われると「悪いアイデアだ」と笑い、画面に映らないものを描く映画だから再現は難しいと答えている。[9][10]
受賞スピーチとマーベル降板
授賞式でのスピーチも印象を残した。ゴールデングローブ賞では、普段自分に語り聞かせる物語はたいてい孤独と孤立についてのものなのに、この場でこんな瞬間を迎えるのは不思議な気分だと述べた。エミー賞では、ダニーとして生きるのが難しく、彼を裁きたくなる日もあったと打ち明け、撮影現場のスチールカメラマン、アンドリュー・クーパーから「ダニーを見捨てるな」と声をかけられたことに感謝した。一方、マーベル映画『サンダーボルツ*』は、ストライキの影響で製作が遅れるなか時間の経過と状況の変化から降板することになった。ユァンは申し訳なさが誠実に伝わるよう何度もメールの文面を書き直したと明かし、それでも「マーベル映画はやりたい」と語っている。[13][14][15]
プロフィール
作品
年は作品の公開日・放送開始日です。本人の参加時期を示すものではありません。
出典
リンク先の著作権は各発行元に帰属します。本文は転載せず、確認した事実をもとに書き起こしています。
- スティーヴン・ユァン — 人物の構造化データWikidata/構造化出典/確認日 2026-10-08
- バーニング 劇場版 — 出演者・公開日の構造化データWikidata/構造化出典/確認日 2026-10-08
- オクジャ — 出演者・公開日の構造化データWikidata/構造化出典/確認日 2026-10-08
- On the Road with Steven Yeun(生い立ちと俳優になるまでを語るインタビュー)Interview Magazine/本人・関係者インタビュー/確認日 2026-10-08
- トロイ高校卒のスティーヴン・ユァン、カラマズー大学で演技に目覚めるWXYZ-TV Detroit/公式一次情報/確認日 2026-10-08
- Steven Yeun(出身者プロフィール)The Second City/公式一次情報/確認日 2026-10-08
- 『ウォーキング・デッド』グレン役ユァンが退場を語るVariety/参考出典/確認日 2026-10-08
- 『非首脳会談』ポン・ジュノ監督、電話出演でスティーヴン・ユァンを絶賛ビズエンター(etoday)/参考出典/確認日 2026-10-08
- 『バーニング』イ・チャンドン監督とスティーヴン・ユァンのインタビューDazed/本人・関係者インタビュー/確認日 2026-10-08
- Interview: Steven Yeun on BurningFilm Comment/本人・関係者インタビュー/確認日 2026-10-08
- 『ミナリ』上映後Q&A(リー・アイザック・チョン、スティーヴン・ユァンほか)National Board of Review/本人・関係者インタビュー/確認日 2026-10-08
- アカデミー賞、演技部門で有色人種の候補が過去最多にVariety/参考出典/確認日 2026-10-08
- スティーヴン・ユァン、ゴールデングローブ賞テレビ部門主演男優賞 韓国系初聯合ニュース/参考出典/確認日 2026-10-08
- 第75回エミー賞、スティーヴン・ユァンとアリ・ウォンが主演賞ABC Audio/公式一次情報/確認日 2026-10-08
- スティーヴン・ユァン、『サンダーボルツ』降板の理由を語るVariety/参考出典/確認日 2026-10-08
- スティーヴン・ユァン、Netflixドラマ『Pagans』に主演Variety/参考出典/確認日 2026-10-08