ソン・ガンホ
1967年生まれ、慶尚南道金海出身の俳優。舞台出身で1990年代後半に映画界へ進み、『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』『パラサイト 半地下の家族』などで韓国映画の顔となった。2022年に『ベイビー・ブローカー』で韓国人男性俳優として初めてカンヌ国際映画祭男優賞を受賞した。
更新 2026-10-08/出典確認 2026-10-09
生い立ちとデビューまで
金海で育った青年時代
ソン・ガンホは1967年1月17日、慶尚南道金海市に生まれた。地方都市で高校までを過ごし、釜山の専門大学で放送や演芸を学ぼうとしたが中退している。いわゆる演劇大学や映画学校の出身ではなく、兵役を終えた後も決まった進路があったわけではない。のちに名優と呼ばれる人物としては珍しく、正規の演技教育をほとんど受けないまま、現場で叩き上げていった経歴の持ち主である。
小劇場から映画の世界へ
演技の基礎を作ったのは舞台だった。1990年、劇団「演友舞台(ヨヌ・ムデ)」の地方公演『崔先生』に端役で出たのがきっかけとなり、1991年に同劇団の団員となって、ソウルの小劇場で『非言所』などの舞台に脇役として立ち続けた。映画デビューはホン・サンス監督の『豚が井戸に落ちた日』(1996)の端役で、翌1997年には、『非言所』の舞台で彼を見出したイ・チャンドン監督の『グリーンフィッシュ』に出演し、同じ年のソン・ヌンハン監督作『ナンバー3』で、どもりながら凄む組織のボス、チョ・ピルを演じて一躍注目を浴びた。
活動の歩み
名監督たちとの90年代末〜2000年代
『ナンバー3』で大鐘賞新人男優賞と青龍映画賞助演男優賞を手にすると、彼の起用は一気に広がった。『シュリ』(1999)で大ヒット作の一角を担い、『反則王』(2000)では覆面レスラーになる冴えない銀行員を演じて主演俳優としての地位を固める。同年の『JSA』では、南北の兵士が密かに交流する物語で北朝鮮軍の中士を人間味たっぷりに演じ、作品は社会現象となった。2002年の『復讐者に憐れみを』では一転して冷え切った復讐劇を背負い、コメディだけの俳優ではないことを証明した。パク・チャヌク、キム・ジウン、ポン・ジュノといった、後に世界的評価を得る監督たちと早い段階で組んだことが、彼のキャリアを決定づけた。
ポン・ジュノとの4作品
代表作の多くはポン・ジュノ監督と生まれた。『殺人の追憶』(2003)では田舎町の刑事パク・トゥマンを演じ、『グエムル-漢江の怪物-』(2006)では怪物に娘をさらわれる売店の父親役で観客動員1,000万人超えを経験した。英語作品『スノーピアサー』(2013)を経て、『パラサイト 半地下の家族』(2019)では半地下に暮らす一家の父キム・ギテクを演じ、作品はカンヌのパルム・ドールとアカデミー賞作品賞を獲得した。同じ2019年には、主演作の累計観客数が1億人を超えた初の俳優としても話題になった。
実在の人物と大作の主役
2000年代後半以降は大作の主演が続く。『シークレット・サンシャイン』(2007)でチョン・ドヨンを支える男を演じ、『グッド・バッド・ウィアード』(2008)、『渇き』(2009)、『義兄弟』(2010)と話題作に立て続けに出演した。2013年には『観相師』と『弁護人』がともに大ヒットし、特に後者では若き日のノ・ムヒョン元大統領をモデルにした税務弁護士を演じて1,000万人を動員した。『王の運命 ―歴史を変えた八日間―』(2015)の英祖、『密偵』(2016)の日本統治期の警察官、『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017)の光州へ向かう運転手など、歴史上の人物や時代を背負う役も多い。
カンヌ男優賞と初のドラマ
2022年、是枝裕和監督の韓国映画『ベイビー・ブローカー』で赤ちゃんポストの子を売買しようとする男サンヒョンを演じ、カンヌ国際映画祭で男優賞を受けた。韓国人男性俳優としては初の受賞である。同年には『非常宣言』、2023年にはキム・ジウン監督と再び組んだ『クモの巣』にも主演した。2024年にはディズニープラスの『サムシクおじさん』で、映画一筋だった彼が初めて連続ドラマの主演を務め、同年末には女子プロバレーボールを描く『1勝』が公開された。2026年にはNetflixの米国ドラマ『BEEF/ビーフ』シーズン2に出演したほか、ナム・ドンヒョプ監督の新作『정원사들(庭師たち)』への出演も決まっている。
エピソード
「水のような演技」という評価
彼の演技はよく「普段着の芝居」と評される。役に深くのめり込むメソッド型ではなく、作品全体の流れを読み、場面ごとに必要な強さだけを出すタイプだと批評家たちは分析する。役ごとに歩き方を変えることでも知られ、肩で風を切る警察官、腰に力を込めて歩く刑事など、立ち姿だけで人物像を作り分ける。1997年のインタビューでは「演技は集中力と気の勝負だ」と語っており、カメラが回った瞬間の集中を何より重視してきた。ポン・ジュノは彼について、アル・パチーノやホアキン・フェニックスらの長所を兼ね備えた俳優だと評したことがある。
名台詞と海外からの評価
『殺人の追憶』で容疑者に向かって投げかける「飯は食ってるのか」という一言は、韓国では今も繰り返し引用される名台詞である。長い台詞を退屈させずに自然に聞かせる技術にも定評があり、同作の取調室の長回しはその代表例とされる。海外での評価も高く、2020年にはニューヨーク・タイムズ紙の「21世紀の偉大な俳優25人」で上位に選ばれた。『パラサイト』でアカデミー賞の演技部門にノミネートされなかった際には、英語圏の映画ファンや批評家から惜しむ声が多く上がった。その評価は2022年のカンヌ男優賞受賞で改めて裏付けられることになる。
ブラックリスト報道と私生活
『弁護人』で故ノ・ムヒョン元大統領を想起させる役を演じた後、朴槿恵政権下で政府に批判的な文化人を排除する「ブラックリスト」に名前が載っていたと報じられた。政権交代後に政府の調査でリストの存在自体が明らかになり、映画界で大きな問題となった。もっとも、その後も『密偵』『タクシー運転手』と主演作をヒットさせ、第一線から退くことはなかった。私生活では一般人の女性と結婚しており家庭を持つが、家族について表で語ることは少ない。派手なスキャンダルとは無縁である。
プロフィール
作品
年は作品の公開日・放送開始日です。本人の参加時期を示すものではありません。
出典
リンク先の著作権は各発行元に帰属します。本文は転載せず、確認した事実をもとに書き起こしています。
- ソン・ガンホ — 人物の構造化データWikidata/構造化出典/確認日 2026-10-08
- サムシクおじさん — 出演者・公開日の構造化データWikidata/構造化出典/確認日 2026-10-08
- パラサイト 半地下の家族 — 出演者・公開日の構造化データWikidata/構造化出典/確認日 2026-10-08
- 非常宣言 — 出演者・公開日の構造化データWikidata/構造化出典/確認日 2026-10-08
- ベイビー・ブローカー — 出演者・公開日の構造化データWikidata/構造化出典/確認日 2026-10-08
- タクシー運転手 約束は海を越えて — 出演者・公開日の構造化データWikidata/構造化出典/確認日 2026-10-08